タイ行きの深層心理は今いる場所から遠く離れたい!? でも奈良に住むという選択肢はできた

小学生のくらいときから「奈良から出たい」と思っていたワコちゃん。

そのあたりのことは第1話に詳しいが、高校は京都に行き、大学は大阪の近大へ。


でも、いずれも実家から通っているわけで、卒業後のことも含め、「奈良から出る問題」の現状について最後に訊いてみた。

撮影:村岡浩之

目次

奈良と家族から距離を置きたい。けど、なんやかんや言うて好き

結論からいうと、留学体験を通じて、地元のことをもうちょっと見つめ直したいみたいな感じになっていた。

ワコちゃん

さっきも言ったみたいに、現地で日本とか大阪、奈良のこととか聞かれても、全然うまく説明できなくて。

だから帰国してすぐ、「ならまち遊歩」って夏祭りのイベントがあるんですけどそれに参加して、そっから奈良を知れるような活動していったんですけど、それを見てくれた大学の先輩が、「奈良でこういうインターンがあるんやけどやってみいひんか」って誘ってくれて。

なかがわ

つながっていった感じで。

ワコちゃん

そうです。観光会社のインターンで、JR奈良駅の旧駅舎の観光案内所に入ったり、ガイドをしたりっていう仕事で。

先月(2022年4月)までやってたんですよ。

なかがわ

じゃあ、大学2年、3年とそういう奈良の何かしらつながりのある仕事をやってた感じで。

ワコちゃん

はい。なお客さんは外国の方が中心で、欧米の方が多かった感じですね。

奈良の観光案内所の仕事を通じて見えてきたこと


ツアーガイドとしては、

  • 東大寺
  • 奈良公園
  • 奈良町
  • 西ノ京(薬師寺、唐招提寺)

なんかを紹介し、時には職員さんといっしょに十津川のツアーに同行することもあったという。

なかがわ

そういう活動を通じて、奈良愛みたいなもんも自然と育まれていった?

ワコちゃん

そうですね。みんなが奈良、京都、大阪って観光してきたけど、奈良の人すごいいい人ばっかりやったって言ってくれたりとか、シカがいる街に住めるってめっちゃすてきなことやでっていう話してくれたりとか。

私が当たり前に思ってた奈良を、向こうの人にとってはぜんぜん当たり前やない新鮮なものとして受け取ってくれてて。

なかがわ

特別なものとしてね。

ワコちゃん

だからその、私が当たり前やった空間を特別って言ってくれて、そんなすてきな場所に住んでたのに、そこに気づけなかったのかっていうのが今のちょっとした後悔っていうか。

今気づけたから全然いいんですけど。


そうした奈良での活動を通じて、「奈良から出たい」問題も自分のなかで新たな側面が見えてきた。

ワコちゃん

今まではずっと奈良を出る前提で動いてたけど、最近は別に奈良にずっといててもいいかなみたいな。

一人暮らしできる環境があったらそれでいいかもしれないと思い始めて。今まで揺らいでたものが、また固まってはいたけど、さらにまた揺らぎ始めて。

なかがわ

ということは、今のそういう感じになる前は、就職してどっか家を出て一人暮らし始めてみたいな想定やったってことですよね、今の話やったら。

ワコちゃん

そうです。関西圏のどこかに就職して、奈良はたまに帰ってくるみたいな。それくらいの温度感。


そのときに、ワコちゃんはあることに気づく。

自分の住んでるところから外に出たい=奈良から出たいとずっと考えていたけど、別に奈良から出なくても、県内の奈良市以外のところに住んだら、目的は達成されるんとちゃうん、と。

なかがわ

それって今聞いてて思ったんだけど、「奈良から」じゃなくて、「実家から」出ることが主になってるんじゃないの?

ワコちゃん

そうですね。家から出る、出たいなっていう。

なかがわ

それはどういうところから来てるんやろね。

ワコちゃん

それは完全に今まで素直にうんうんってうなずいてきた分…。

なかがわ

そっか。さっき、「大学1年までは、ずっと従順やった」って言ってたやん。その大学1年のときに、反抗するというか変わったきっかけって何かあったのかな?

ワコちゃん

ありました(笑)

自分の自転車で走り出す。暗い夜の帳りの中へ

あるとき、美容師のお友だちがカットモデルを探してるということで、ワコちゃんが手を挙げた。

その際に、インナーカラーを始めて入れた。全体的にはブラウンで、インナーカラーはピンクにした。



その髪色で家に帰ったら、お母さんがめちゃ激怒して、「お父さんには言わんようにするから、今のうちに黒染めしておいで」ってお金を渡される。

ワコちゃん

それが友だちも否定されたように聞こえて。せっかくやってくれたのに。

それもあるし、私がやりたいことをやっと今できてるのに、なんでそこは許してくれへんのってなって、その日は静かに家飛び出しましたね。

なかがわ

それは口論にはならなかったの。なんでよ、とか。

ワコちゃん

いや、なりました。「今すぐ謝りなさい」って話になったんですけど、「なんで謝る必要があんの」ってなって、もういいわってなって、いったん部屋帰ってきたんですけど、部屋にいるのも心地悪くって。

いったん家出てリフレッシュしようと思って。そのまま朝になったら帰る予定やったんですけど。いったん自転車乗って外出てふらついてたら、もちろんめっちゃ電話かかってきて。

なかがわ

お母さんから。

ワコちゃん

お父さんからも電話かかってきて。帰るまで寝えへんみたいな言うんで、寝させんとこと思って、そのまま家出てたんですけど、自転車走りながら。

なかがわ

いや、まあご両親からしたら心配するやろからね。

ワコちゃん

そしたらお姉ちゃんからも電話かかってきて、それが夜中2時ぐらいやったかな。お姉ちゃんそんとき一人暮らししてたんで、一人暮らししてる身やから私の気持ちもわかるし、今もう少し我慢したら出れるからみたいな言ってくれて。

なんやねんみたいな思ったんですけど、いったんは親寝れへんから帰りって話になって、それから帰ったっていうのがけっこうデカかったですね、そのときは。


それが大学1年生の夏休み、留学に出発する直前のときの話。

その後、「いつ染めに行くん」みたいなのを毎日のように言われ、折れるカタチで1週間後くらいに黒染めにした。

ワコちゃん

それで留学の出発の日になって、空港に見送りにきてくれてた近大の子がいっぱいおって、髪の毛緑の子とかも普通にいてて、普通にその子たちとしゃべってる姿を親が見て、その日アメリカにちょうど着いたときに、「あのときピンクの髪色がなんたらかんたらって言ってたけど、ちょっと偏見あったかもしれへん」ってメッセージがあって。

なかがわ

あ、じゃあ、一応理解は示してくれはった感じで。

ワコちゃん

示してくれて、わかってくれたのはよかったんですけど、帰国してから一緒に生活をしていると、やっぱりちょっと自分の価値観と違うものに出会うと、例えばテレビに出ている人に対しても偏見というか、いちいちいちゃもんつけるというか…。

実家の居心地はいいんですけど、こんままいると自分では自分のやりたかったこととか大切にしてるものが壊れそうやなと思って。絶対それは大学出たら一人暮らししようと思ってましたね。

なかがわ

それは、直接は言ってない?

ワコちゃん

言ってないですね。言うとまた口論になるので。
いったん距離離れないとと思って。

遅れてやってきた反抗期

お話を聞いていると、たしかに遅れてきた反抗期のような気もするし、とはいえ、今現在の当事者――ワコちゃんにとっては切実な問題だったりもする。

なかがわ

「いったん距離離れないと」って話だったけど、それはお互いにいいことかもしれへんね。

奈良から出るって話といっしょで、嫌ってたけど外にちょっと出てみたら奈良の良さを再認識するみたいに、お母さんのことも「私のこと、こんなに思ってくれてたんだ」とか気づきがあるかもしれへんし。

ワコちゃん

そう思うと、めっちゃ箱入り娘やったなって思うんですよね、そういうところで。

なかがわ

確かにね。

ワコちゃん

ただ、一方で、大学に入ってからインターンとかボランティアに行って、そこで出会った人たちを見て、もっと自分のやりたいことを探求してみるっていうか、自分を大切にしなあかんなっていうか…。

なかがわ

これまでがなんでも言われた通りする感じだったんで、余計にね。

まあでも、どっちが正しいとかでもないんだけど、お母さんが娘さんのことを大事に、大事にって気持ちもわからんでもないし、そんなところへ持ってきてタイ行くとか言い出したら、また反対するわみたな。

ワコちゃん

そうですよね。タイに行きたいって思ったのは、タイ語やってるしっていうのもあったんですけど、よくよく考えてみたら、やっぱりどっかでは少しでも早く(家から)離れたかったっていうのがあったんやろなっていうのは思い始めてて。

なかがわ

深層心理で、物理的な距離感みたいなんを求めてたのかもしれない。

ワコちゃん

そうなんですよね。

奈良に住むっていう選択肢はできた

ここまでのワコちゃんの話の軸となっていたものをまとめると、

  • 奈良から出たい→奈良から出なくても、家を出て奈良の別のところに住むでいいのでは
  • 親の反対を押し切って近大に進学したので、絶対に何かしらを得て卒業する

といった感じで、10年来続いている「奈良から出たい」問題は行ったり来たりしつつも、いい感じになってきているように思われる。

なかがわ

なんか話聞いてたら、奈良に住むのは大丈夫みたいになってたよね。

ワコちゃん

そうです。これまでは想定してなかったんですけど、奈良に住むっていう選択肢はできました。

なかがわ

そっか。それは前はなかったわけやね。ウソでも大阪とか近くでもいいから出るみたいなんがあったけど、奈良でもええやんみたいになったっていうね。

ワコちゃん

そういうノリですね。だから、選択肢がまた増えてしまって、どこに住もうって。



んで、もう一つの問題というか意識しているのが、近大で全力を尽くすというミッション。

ワコちゃん自身、あこまで反対されたら絶対がんばって、いろいろ吸収するという意気込みで入学し、実際にそれを実践してきた。

なかがわ

休学してタイ行くから、あと1年間は大学生活あるけど、これまで振り返ってみて、入学前はお母さんとかにもめっちゃ反対されたけど、こんだけのことやってきました!って言い含められるものは出来上がった感じ?

ワコちゃん

めっちゃプレゼンしたろかなと思いますね(笑)。4年間何してきたか。自分でもめっちゃ充実してたと思うんで。

なかがわ

そういう意味では大学のこれまでの3年間でいろいろ変化があったと思うけど、これからの展開も楽しみやんね。

ワコちゃん

楽しみですね。何が起こるかもまったく想像つかないので。まずは最初のミッションとしては、タイの電気屋さんに行ってWi-Fiの契約してくることなんですけど(笑)。

※出発直前に現地の管理会社から、部屋にWi-Fi入れたからと連絡が入り、無事に最初のミッションは終了。5月半ばからワコちゃんのタイでの生活がスタートしました。



最終話は、ワコちゃんによる奈良観光案内です。

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