養護教諭をめざしていた学生時代、東京でのフリーター生活、コロナ禍、そして神戸との出会い

2022年6月、東京から神戸の和田岬に引っ越してきたルカさん。

旅行で和田岬に来たときにこの場所を気に入り、「いつか住もうかな」と思ったのが本当になった感じで。


そんなルカさんの東京時代のお話と、初めて神戸に来たときのお話。

※写真:白石卓也

目次

保健室の先生をめざしていた学生時代

出身は東京の大田区。小中高、短大とすべて東京の学校に通った。

短大は保健室の先生をめざし、資格が取れるところに入学をした。

ルカさん

学校が好きだったんですけど、 何でだろう?って思ったときに、 大人とか先生とかが好きだったこともあるし 、逃げ場所と言うか、保健室が逃げ場所になることが多いなと思っていて。

なかがわ

心身どちらとも、学校でちょっとしんどいなって思ったときに、逃避できる場所みたいな。なんか、具体的なエピソードとかあったんですか?

ルカさん

中学生のとき、給食を食べれない友達がいて給食の度に帰ったり、保健室に行ったりしていたんですけど、「あー、保健室行ってるな」って。

そういった子にも学校を好きになって欲しくて、(彼女たちを支えてあげられる)保健室の先生をめざしたんですけど。

なかがわ

それで養護教諭(保健室の先生)が取得できる学校に行かれたわけですね。

学童保育の現場で小学生の女の子から受けた衝撃的な仕打ち

養護教諭をめざし短大に通い、並行して学童保育のアルバイトにも取り組んだ。

実習も含め、現場の経験が増えていくなかで、子どもとじかに触れあっていくことの難しさを実感する。

ルカさん

例えば、お母さんの意向なのか、完全に女の子の格好をしている男の子がいっしょにいる男の子とずっと手をつないで行動してたり。

あとは、「ちょっと家庭環境に問題があるけど口外はできない」「問題がある児童だけど、保健室に来たら受け入れてあげて」とか、いろいろあって。

なかがわ

実際に現場に出てみるといろいろなケースがあって、内容もハードだぞみたいな。


そんななか、ルカさんにこの道は向いていないかも、と実感させられる大きな出来事があった。

あるとき、学童保育のアルバイトをしているときに塀の上にのぼっている児童がいて、危ないから下りておいでと声をかけた。

ルカさん

小学校1年生くらいの女の子だったんですけど、そしたら「なに指図してんの」みたいなこと言われたんです。

なかがわ

えらそうというか、高圧的な態度取られたんだ。

ルカさん

はい。「いや、そうじゃなくて、危ないからこっちおいで」って言ったら、塀の上からバケツいっぱいの砂をかけられて。

その時にびっくりして何も言えなくて。「だめだよ」とかも何も言えなくて 。なんでそんなことしたのかとかも、その子の意図とかも何も汲めなくて。こんなことで何も言えなくなるようじゃ無理だなと思って、心が折れて。

なかがわ

けっこう、衝撃的な出来事があったんですね。


それが2年次の秋くらいのこと。

このまま資格取って、予定通り「保健室の先生」になるのかなと思っていたが、進路変更を余儀なくされる。

短大卒業後にリサイクルショップで働く

周りが就職活動などで慌ただしくしているなか、自身は急きょ明確な目標がなくなった。

どうしようと思っていろいろ考えたが、いろいろ考えているうちに卒業を迎え、フリーターになっていた。

ルカさん

それで4月もぼーっとしてたんですけど、そのとき前のバイト仲間の人がタイミングよく連絡してきてくれて。

高校の時から大学にかけてファミレスでバイトをしていたんですけど、 そこでいっしょに働いていた人が「リサイクルショップで店長やっているんだけど、もしよかったらバイトしない?」って連絡が来て 。

なかがわ

卒業して、すぐくらいのタイミングで?

ルカさん

そうですね。卒業してから1ヶ月も経たないくらいで、家でぼーっとしていた時に連絡があって。

なかがわ

ちなみに、そのリサイクルショップどちらにあるんですか?

ルカさん

西荻窪です。実は当時、私は神奈川の綱島というところに住んでいて。

電車で1時間半くらいの距離なんですけど、通勤が遠くてもあまり苦にならないタイプなので、 「わかりましたー」って言って 。


当時、網島のマンションには短大時代の友だちといっしょに住んでいた。

リサイクルショップの仕事はフルタイムで入り、10時~20時、週5で入った。

なかがわ

リサイクルショップの方はやってみてどうでした?

ルカさん

めちゃくちゃ楽しかったです。 家具とか服とか知らないことをいっぱい知れて。

初めてそこで中央線(界隈の文化)にも触れることができて、割とサブカルな街だなって。

なかがわ

確かに、中央線界隈は本屋さんがあったり、音楽とか演劇やってる人が多かったり、サブカル色は強いですよね。

ルカさん

なんかバンドマンのバイトの人とかもいて、知り合いが広がって楽しかったです。

中央線沿線、三鷹の街にあこがれて

ルカさんが生まれ育った東京の大田区は羽田空港とかかがある地域で、位置関係でいうと東京の中でも南の方になる。

一方、JRの中央線は東京の西の方から、名前の通り東京都の中央あたりを新宿に向かって伸びている。



要は同じ東京でも地理的な乖離があり、ゆえに上でルカさんが「初めてそこで中央線に触れて」と言ったように、彼女自身、子どもの頃は中央線沿線の方に行く機会はほとんどなかった。

なかがわ

それがリサイクルショップの仕事で西荻窪に行くことになって、行ってみたらサブカル色強くておもしろいな、となったと。

その流れで三鷹に引っ越した感じですか?

ルカさん

当時付き合ってた彼氏が国分寺に住んでて。

それで近いとこがいいなっていうのと、そのとき三鷹は一回も行ったことがなかった土地で、知らないところ住んでみたいなとなって。実際に住んでみて、三鷹は最高です。東京の中で一番最高。


なかがわ

具体的に何がよかったの?

ルカさん

スーパー行くとおばあちゃんがめっちゃパワフルで。

スーパーの無料で袋とれるところあるじゃないですか。そことか夕方に行くと全部なくなってるんですよ。

なかがわ

大阪のおばちゃんみたいな感じですね。

ルカさん

そうですね。あとは注目されてないけど、「風の散歩道通り」ってのがあって。三鷹駅からジブリ美術館までの道なんですけど。

あと三鷹に住んでた人が好きで、太宰治とか、井上陽水とかも住んでたり、ピースの又吉さんも住んでて。そこもうれしかった。

なかがわ

太宰治が住んでたのは有名ですよね。


そんな大好きな三鷹だったが、こっちに引っ越して来てから二度、三鷹のなかで引っ越しを行っている。

理由を聞くと、最初実家から三鷹に引っ越して来て(駅近)、その後国分寺に住んでいた彼氏と同棲することになり(駅から徒歩17分)、別れて一人で住んで(駅から徒歩20分)ということらしい。

住んでたのは駅北側で、南側にはよく飲みに行っていたという。

▲三鷹駅北側にある水中書店
なかがわ

三鷹駅の北側で思い出したけど、水中書店ってありますよね。

ルカさん

わたし読書が好きで、本屋さんもよく行くんですけど、水中書店一番好きです!

なかがわ

昔、本屋さんを紹介するポータルサイトを作ったんですけど、そのときに水中書店さんにもお邪魔して。

その際に、店主の方とすごく仲良くなったとかそんなエピソードは特にないんですけど、個人的にすごく印象のよかった本屋さんで、近くにあったら通いそうとか思った記憶がある。

ルカさん

実際によく通ってました。

フリーターからサブウェイの正社員に

リサイクルショップで働いている時、掛け持ちでコンビニのバイトもやっていた。

あるとき、そのコンビニの店長が「フランチャイズでサブウェイのオーナーをやるから、社員にならない?」と相談された。

ルカさん

社員っていいなって思って。それでサブウェイで働くことになったんです。

なかがわ

じゃ、そのタイミングでリサイクルショップも辞めて?

ルカさん

そうです。リサイクルショップは半年くらいで辞めてサブウェイに行ったんですけど、蓋を開けてみたら労働時間が長くて、それだったらバイトにしてもらって時給の方が稼げるやって思って正社員を3カ月で辞めて、 その後バイトとして働いていました。

なかがわ

そのときは、店長とかだったんですか?

ルカさん

副店長みたいな感じで。


その後、1年半ほどサブウェイで働くことになる。

ということは、1年半後にまた転職をするわけだが、それには居酒屋で知り合った見も知らぬおじさんがかかわっている。

三鷹の居酒屋で見知らぬおじさんに言われた一言が心に響く

ある時、三鷹の居酒屋で出会った名前も覚えていないおじさんが、「仕事何してるの?」って聞いてきた。

「普通にフリーターです」 っていうと、「何かやりたいこととかないの」と被せてきた。

ルカさん

「特にないです」って言ったら「仕事するなら1日8時間も9時間も拘束されるんだから好きなことやった方がいいよ」って。

確かにって思って、好きなことなんだろうって考えたら、文章書くの割と好きだなぁと思って 。そこから、ライターの仕事を探すようになって。

なかがわ

文章書くの好きってことで、さっき読書が好きって話もありましたけど、昔から書いたり読んだりするのが好きだったんですか?

ルカさん

そうですね、昔から読むことが好きで、書くことも中学からブログもやってて。ガチでやっていたわけではないんでけど、 たまに友達がのぞいてくれて面白いって(言ってくれて)。

文章を褒められたときが一番うれしくて、これが好きなことかもしれないって思って。

なかがわ

中学からずっとブログは続けて?

ルカさん

はい。中高、短大はずっとアメブロでやっていて、友だちから「今noteってやつが来てるから、noteでやれば」って言われて今はnoteでやってます。


それでライターをめざそうとなって、サブウェイを辞めて2~3カ月ほど無職をやりながら、「バイトでもなんでもいいから文章を書ける仕事を探そう」と思って、業務委託のライターの仕事にありつく。

タウンワークとか、求人広告の原稿作成で、業務委託先の事務所に通ってライターとしての仕事をこなした。

なかがわ

ライターを仕事としてやってみてどうでした?

ルカさん

楽しかったです。これまで文章にケチを付けられることがなかったんですけど、いろいろ指摘を受けるのが新鮮で。 リズムとかを気にしていたことがなくて。

なかがわ

文末の「ました」がかぶってるよとか? 一文が長すぎるとか?

ルカさん

そうです。(文章が)ラフすぎるとか。文章の言い換えとかもこんなに種類があるんだ、こんなに(媒体によって使える表現が)限られているんだとか。


楽しくライターの仕事をこなしていたが、やがてコロナ禍となり、仕事がぜんぜん入ってこなくなる。

そこからつなぎでコンビニのバイトをぼちぼち入ったりしてると、前に同じ職場にいてたライターの人からお声かけがあり、アルバイトみたいな感じでライティングの仕事をするけど(WEB媒体の求人広告)、その頃に心身に不調を来たした。

職場の人に相談したら、「席置いとくから、いつでも帰ってきていいからね」みたいに言ってくれて、顔を出したり出さなかったりというのが1年間ほど続いた。

そうだ、神戸に行こう!

心身に不調を来たし、フルタイムでの仕事が難しくなって、たまにライターの仕事しつつコンビニでもアルバイトをする日々が続いたが、ちょうどその頃、「どこかに行かなきゃいけない」と思うようになる。

サブウェイで働いていたときの貯金がそこそこたまっていて、これを使って旅行にいこうと思った。

ルカさん

アルバイトの掛け持ちとかもしてたりしたけど、稼いだ割にあんまり使わなくって。

なかがわ

飲み歩いたりもせず。

ルカさん

飲み歩いても、隣にいたおじさんとかが奢ってくれて。あんまりお金もかからないし。

なかがわ

そか。三鷹とか高円寺で女の子が一人で飲んでたりしたら、そんな感じになるよね。

ルカさん

で、その頃ちょっと鬱っぽくなってて、これ(貯金)使い切らないともったいないなと思って。死ぬにしてもとか(笑)

なかがわ

いや、死ぬとか極端やな(笑)

ルカさん

その時落ち込んでたんで。ほかの人に使われるのやだなと思って(笑)。

それで一人で旅行するようになって。



それで2021年3月、神戸に2泊3日の旅をする。

東京でよくライブに行っていたジョズエってバンドのヴォーカルの「にたないけん」さんが神戸の和田岬で弾き語りのライブをやるというのをTwitterで知って、じゃ、神戸に行こうとなった。

ルカさん

旅行も行きたいし、にたないさんもやるっていうから観に行こうってなって。

なかがわ

旅行はどこ行ってもいいけど、目的もないしどうしようかなって時にそういう外的な要因があって、それに乗っかっていこうみたいな。

ルカさん

そんな感じです。

神戸の街に魅せられて

神戸というか和田岬のカルチア食堂というお店ににたないさんのライブを観に行き、神戸を観光し、最終日に京都に行って、そこから新幹線で東京に帰ってきた。

行ってみて実感したのが、神戸の街が楽しいということと、自分のことを誰も知らない場所が心地いいということだった。

ルカさん

東京はずっと知り合いに囲まれてきたんで。好きなものも嫌いなものも何もないところに行くのが新鮮で。

普通に道を歩いてて、すごい楽しいんですよね。

なかがわ

神戸市内、三宮とかも含めて?

ルカさん

そうですね、うまく言えないけど街の雰囲気も東京と違うくて。

中でも一番楽しかったのは和田岬ですね。それがきっかけで神戸に住みたいってなって。

なかがわ

それが2021年の3月で、その後も何回か神戸に行ったりするんですか?

ルカさん

2回目が同じ年の7月ですね。それで年明け(2022年)の2月に、にたないさんのライブでまた行って。

にたないさんも、(ライブ会場でもある)カルチア食堂とか和田岬とか好きみたいで。

思わぬ人との二人旅

最初の神戸が2021年の3月で、その4か月後の同年7月に再度神戸を訪問した。

初めて行ったとき、和田岬を中心に神戸の街の雰囲気が大好きになり、だからこそ比較的早い段階で2回目の神戸行きを実行したわけだが、「2回目で何か変わった?」って訊いてみると、「2回目はあんまり楽しくなかった」という返事がかえってきた。

ルカさん

神戸に行く前日に飲んでて、明日神戸行くんだって言ったら、「じゃあ俺も行く」って言ってきたやつがいて。

なかがわ

え、なにそれ、彼氏じゃなくて?

ルカさん

はい。付き合ったりしてないです。

なかがわ

じゃ、追っかけみたいにかってに付いてきて。てか、拒否ってもついてきたんだ。

ルカさん

いや、その時はその人とそこまで言える関係じゃなくて。知り合ってまだそんな日がたってなかったので。来ないでほしいって思ったんですけど。

だけど、人が休みの日に何しても自由だよなって思って。人の行動を制限するのはどうかなと思って(拒み切れなかった)。

で、けっきょくその彼(30歳、IT企業勤務)も神戸にやってきた。

行きはバラバラで行ったが、現地での二日間はいっしょに行動することに。

なかがわ

ルカさん的には、気をつかいながらあっちこっち行って、疲れたみたいな。

ルカさん

めちゃ疲れましたね。

なかがわ

じゃあ、二回目の神戸はあんまり大した発展はなくて、土地との関係性においては。

ルカさん

そうですね、土地とはあんまり。

なかがわ

といって、彼との仲が深まったわけでもなく。

ルカさん

ないですね。ちなみにそいつ今神戸住んでます。

なかがわ

えー、まじで。追々うかがいます(笑)。


ルカさんの半生part2に続く。

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コメント

コメント一覧 (1件)

  • 神戸はいい所です。

    私は、16から神戸に行き
    阪神・淡路大震災の被災者になり
    色々



    あり過ぎて
    10年ぐらいかな?
    出身地の東京へ帰郷してきました。

    東京ね、
    違いますね、
    長く関西人したら
    私の気質も変わったやろし

    どこも生きにくいのは
    何故なんでしょ。
    課題は課題のまま。

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