本屋で働く書店員だけど、週1でアダルトグッズ店(TENGAショップ)で働いています&河童の話

知り合いのキシダチカさん(@ Chika_15にインタビューどうですか?ってお伺いしたら、

スケジュール的にしばらく先になりそうとのことで、代わりに「私の母とかどうでしょう?」とお返事があり、ご紹介いただいたのハルさんでした。


※撮影協力:calico(古着屋)FARPLANE(ファープレーン)
※撮影:村岡 浩之

目次

書店員とアダルトグッズ店の二刀流

現在は書店員として働くとともに、週に1回だけ大阪市内のアダルトDVD・アダルトグッズ店で働いているというハルさん。

結婚後は専業主婦として過ごし、お子さんがある程度大きくなった時点で働きたいとなって、もともと本好きということもあり、家の近所の本屋さんにアルバイトに行ったのが最初だった。

ハルさん

そこの本屋さんはいろいろあって1、2年で辞めちゃったんですけど、その後また別の本屋さんにスタッフ募集があって。

その大手チェーン系の書店に採用いただいて、今で10年目くらいになります。

なかがわ

何コーナーを担当されてるんですか?

ハルさん

コミック担当なんですよ。青春時代が80年代で、その時代のサブカルというかポップカルチャーにどっぷりハマってて、

それでコミックもですね、そういうサブカルコミックを、岡崎京子さんとか、しりあがり寿さんとか、ああいう方が好きで、すごく読んでたのでコミック担当になりました。

なかがわ

志願された感じで?

ハルさん

志願というか、どういうのを読まれてますかって面接で聞かれて、こうこうこういうのが好きですって言ったら、ああじゃあもうコミックですねって言われて。

10年間、コミック担当一筋で。


当然、商品のセレクトも任されており、最近だと、

  • 和山やま『女の園の星』
  • 平庫ワカ『マイブロークンマリコ』

なんかを推したりした。

ハルさん

まあ、ちょっとサブカル寄りのをオススメはしています。

知り合いのレズビアンバーをお手伝い

calico(キャリコ)さんの前で。

本屋さんで週に4回、朝の9時から16時まで働いているハルさんが、なぜゆえにアダルトグッズ店で働くようになったのか(週に1回)。

結論からいうと、知り合いの方にお願いされて、店頭に立つことになったという。

ハルさん

アダルトグッズのメーカーさんにお勤めの女性がいらっしゃいまして。

元々は娘の友人だったんですよ。その方は女性同士でも使える商品を開発されているレズビアンの方で、縁あってビアンバーでも働くことになったんです。

なかがわ

あ、そうだったんですね。

ハルさん

はい。そのレズビアンバーも知り合いの方に手伝ってほしいと言われて勤めた感じで。

なんか「明るく性の話とかそういうセクシャリティの話ができる人が欲しい」っていうことで、誘われて行きました。

なかがわ

なるほど。そのレズビアンバーも週1回ぐらい行かれてたんですか?

ハルさん

週1ですね。宗右衛門町のお店で。19時オープンで、お店はお客さんがいる限り開けてましたけど、私は終電までみたいな感じで通っていました。

とにかく自分の知らない世界に飛び込みたい」っていう気持ちが強くて、喜んでお手伝いに行った感じですね。


実際に、お店に来るのは大半がレズビアンの方で、周囲にカミングアウトしてない方が多く、お店に来たらいつもの自分、本当の自分でいられるっていう方が少なくなかったという。

ハルさん自身はノン気(異性愛)だが、そうしたお客さんの相談役として、いろいろな人の話に耳を傾けた。

なかがわ

例えば、家族に打ち明けるタイミングとか、彼女たちのお悩み相談みたいなのもやってたり?

ハルさん

そうなんですよ。だから、「ハルさんの娘が、もしもレズビアンやったらどうする?」とか相談されたり。

いろいろな方といろいろなお話をさせていただきました。

女性向けのアダルトグッズの店内コーナー立ち上げスタッフに請われる

レズビアンバーで働いたのは半年間ほど。

元々の依頼が「立ち上げ時のお手伝い」をしてほしいとのことで、半年くらいしてお店が落ち着いてきたタイミングで、「あとはビアンさんのスタッフだけで頑張ります」ってことで、ハルさんはお店を卒業した。

なかがわ

で、その後、お店で知り合った方から相談があって、アダルトショップで週1回だけ働くようになると。

ハルさん

そうです、「商品を卸しているお店を運営する会社の部長さんが、某店舗のアダルトグッズ売り場の拡張を考えていて、スタッフを探している」と。

あと、「明るく性の話ができる人が欲しい」って言われて。

なかがわ

それ、どっかで聞いたセリフですね(笑)

ハルさん

はい(笑)。私自身も、また未知の世界に飛び込む楽しさで、面白そう!と思って行くことにしました。

お爺ちゃんとかにも性のというか玩具のアドバイス

取材場所としてリクエストされたお店の一つBAR「FARPLANE」が入るビルの前で。


勤務先はアダルトDVDの買取なども行っている大手の量販店で、お店も販売スタッフを探しており、そこでくだんのメーカーの女性がハルさんを紹介し、今は毎週末お店に立っている。

コロナ禍となって以降、お客さんの数は減ったが、それ以前は中国人のお客さんがすごく多かった。

なかがわ

中国人の爆買いというと、観光客が家族連れで来るイメージがあるんですけど。

ハルさん

そこはアダルトグッズ店なので、カップルとか夫婦とかですね。まあ、それは中国人に限ったことではないんですけど、「黄昏流星群」みたいなね、カップルさんがよく来ます。

あとは、深刻な性の悩みを抱えて相談に来られる方もけっこういるんですよ。


例えば、早漏だ、遅漏だ、女性で中イキしたことがない、とか「彼氏のが大きすぎて入らない」とか、まあヒトの悩みは千差万別。

ただ、よくできたもんで、それらの症状に対応したアダルトグッズもいろいろと開発されており、お悩み相談に基づき、有効と思われるアイテムを適宜ご紹介する。

なかがわ

若いカップルとかはなんとなくイメージ付くんですけど、おっさんとかも相談に来たりするんですか?

ハルさん

ありますよ。お爺ちゃんで、腰動かすのしんどいから、そっちから勝手に動くのある?とか。

なかがわ

なんでしょう、よくわかんないけど、それはドール的なやつとか、そういうことですか? もしくはテンガ的な?

ハルさん

後者ですかね。TENGAには自助具をつけて使用する商品もあったりするんですよ。

なかがわ

あ、あるんですね。

ハルさん

あります、あります。お身体が不自由な方にも使ってもらえるようになっているんです。


という話を聞いて、障碍者の方の性の問題を取り上げた『セックスボランティア』という本を昔読んだことを思い出した。

TENGAとかいうと、エロいおっさんが買いに来てみたいな一般的なイメ―ジがあるけど、性の分野は奥が深いとあらためて実感する。

アダルトグッズ店での接客について

例えば、飲食店とかスーパーとかでの接客だと、お客さんがお店に来たら「いらっしゃいませ!」と元気よく声をかける。

ただ、レンタルビデオ店のAVコーナーとかだとむやみに声をかけられたくないというのと一緒で、アダルトグッズ店もお忍びみたいな感じで商品を見にくる人が多いのかな?と思って、そのあたりどんな感じなのか聞いてみた。

ハルさん

普通に「いらっしゃいませ」は言いますね。

なかがわ

それで、困ってる人とかいたら普通にお声かけしたりして。

ハルさん

そうですね、一箇所に留まって、何個も何個も見てはる方がいらっしゃったら、「よろしければ、ご相談にのりますけど?」とかは声かけますけど。

お客さん自体は、けっこう、ひっきりなしに来られます。

なかがわ

通販が主流と思ってましたが、けっこう来られるんですね。

ハルさん

やっぱり実物見たいんじゃないですか。実物見て、サンプル動かして、どんなもんかな、とか。



客層の男女比を訊いてみると、7:3か、6:4くらいで男性が勝っているが、意外と女性客も多いとのこと。

なかには若い女子が集団で来て、「うわー、何これ、この動き」とか言いながらキャッキャキャッキャ言うてたりすることもあるそうで。

なかがわ

場所が大阪市内の繁華街だから、いろいろな人が来るみたいな。

ハルさん

そうなんですよ。近くに何かの用事で来たついでにって感じで来られる方も少なくない感じで。

セクハラ対策として派手な服で店頭に立つ

本屋さんでアルバイトし、週1でアダルトグッズ店にも出勤するハルさん。

仕事中はどっちの職場でも同じような格好をしているのか質問してみたら、TENGAショップでは派手な服で店頭に立つという。

ハルさん

おっちゃんとかも多いし、おとなしい感じの見た目だと舐められるんですよ。

セクハラとかもされそうになりますし。

なかがわ

そうか、エロいグッズとか売ってるから、ノリでセクハラまがいのことする人がいたりする。

ハルさん

そうなんです。ノリで「お前もこんなおもちゃ使って毎晩やっとんのか」とか言われたりもすることがあったりして。

なかがわ

けっこうなセクハラじゃないですか(笑)。

ハルさん

「やめてくださーい!」って、でっかい声で言いますけどね(笑)。

なかなかパワフルというか、確かにハルさんの言うように、おとなしくしていたらガンガンに来られるので、常に気合を入れるというか、隙を見せない感じの接客が求められるのかもしれない。


セクハラの事例はなかなか無茶苦茶な感じではあるけど、もちろん、みなさんがそんな感じではなく性のお悩みなどを抱えてやってくる方も普通にたくさんいらっしゃるとのこと。

そんなアダルトグッズ店に出勤後、1日の始まりはどんな感じでスタートするのか聞いてみると…

ハルさん

えーと、そういう玩具が置いてあるじゃないですか、たくさん。

綺麗な状態でお客様に見ていただきたいので、まずカゴにバーって入れていって、1本1本洗うんですよ。1本って言い方もあれやけど。

なかがわ

へえー。お水でですか?

ハルさん

水で。大体完全防水なんです。なので1本1本洗剤でね、洗ってます。

なかがわ

それ何十本ってあるんでしょ? それだけでけっこうな時間食いそうですね。

ハルさん

そうなんですよ。それでまた拭いて、陳列して。

なかがわ

ほいで、オープンみたいな。

というわけで、家電量販店でも飲食店でもアダルトグッズ店でも、まずはお店をきれいにする。

そして商品も毎日きれいにして、お店をオープンするということで、やっぱり清潔感は大事ということですね。

本屋さんで出会ったお客さんの話(カッパを捕獲した人ほか)

何度かご紹介したように、ハルさんは現在週4回本屋さんで働き、週末の1日だけ大阪市内の某DVD販売店内にあるアダルトグッズ売り場に勤務している。

単純な仕事の比率でいうと4:1なわけだが、これまで記事内のお話は「TENGAショップ4、本屋さん1」みたいなことになっていて、つまりは実際の仕事量と記事での紹介量が逆転していまっている。



これは由々しき問題だ、と慌てふためいたのかというとそんなこともなくて、別になんでもええやんけって感じではありますが、せっかくなので書店でのお話も聞いてみた。

河童を捕まえたおっさん

なんかここまで使ってきた写真の1枚1枚の情報量が多いというか、目がチカチカするとうか、なんかお腹いっぱい感があった(←いい意味で)感じだったので、いらすとやのシンプルな河童のイラストかわいいやんけ、落ち着くやんか、というのはまったくの余談で、

本屋さんにこれまで勤務してきたなかで印象に残っているお客さんについて伺ったときに、ハルさんから出てきたキーワードが「カッパ」だった。



かれこれ10年以上前の話で、あるとき書店に入ってきた初老の男性(60歳くらい)が、「こんな本ある?」「あんな本ある?」といろいろと店内のPCで検索し出した。

そこへ、何かお探しですか?と近づいていったハルさんに、そのおっちゃんがこんなことを言った。

ハルさん

「わし実はな、国から河童を捕獲できる許可書をもらってんねん」と。

で、見したろかって言うたんで、じゃあぜひ見せてくださいって言ったら、こうね、ラミネートに挟まれたね、河童捕獲許可証っていうのを身分証をね、見してくれはったんです。

なかがわ

実際に持ってたんですね。

ハルさん

そうなんです。んで、すごいですねみたいな感じで対応してたら、「あんた河童をどうやって捕まえるか知ってるか?」「いや知らないです」って言ったら、初なりのキュウリ、その年の初なりのキュウリ、これが1番カッパが好きやと。

なかがわ

ようわからんけど、初鰹みたいなもんか。

ハルさん

そうですね、初鰹みたいな「初なりのキュウリをな、使うのが1番掴まんねん」「そうなんですか勉強になります」とか言って話してたら、急にね前屈みになって小声になって、「実は今日な車に乗せてんねん河童」。

なかがわ

それはぜひ見に行かないとダメですね。

そこまで言ったおっちゃんも、当然のように「見に行けへんか?」と誘ってきた。

ハルさんも、すごい見たい!と思った。

でも、結論からいうと、おっちゃんについていって河童を覗きに行ったりはしなかった。

ハルさん

私これ行ったら車の中にドンってされて、河童の嫁にされたらどうしようと思って。

「いや、ちょっと今日忙しいんでけっこうです」って断ったんですよ、

なかがわ

わー、もったいない。

ハルさん

でもね、このカッパの話には後日談があるんですよ。

なかがわ

ぜひ聞かせてください。

河童の話の後日談(民博での出来事)

3年くらい前に、大阪の国立民族学博物館(吹田市)、いわゆる「ミンパク」に行ったときのこと。

ちょうど『特別展「驚異と怪異――想像界の生きものたち」』っていうのをやっていて、面白そうと思ってハルさんは娘さんといっしょに観に行った。

ハルさん

そしたらね、展示してあったんですよ。

なかがわ

河童がですか?

ハルさん

その「河童捕獲許可証」が!

なかがわ

え、その人やつ?

ハルさん

はい、その私が働いている本屋さんで声をかけてきたおっちゃんでした。

なかがわ

ごめんなさい、河童捕獲許可証ってよくわらないですけど、そこには何が書いてあるんですか?


って聞いてみたら、以下のような回答が返ってきた。

  • 名前
  • 顔写真
  • 「河童を捕獲することを了承します」みたいな文言

ということで、体裁的には車の免許初みたいなもんかな?と思って聞いてみたら、「そうです、そうです」とのこと。

なかがわ

そのおっちゃん、どこでどうなったかしらんけど、それ(河童捕獲許可証)が展示されてたんですね。

ハルさん

そうなんですよ。で、その人が本屋に来たときの話は家族にもしてたので、その展示品を見たときは娘と二人で「うわー」ってなって。

なかがわ

そうなりますよね。いまどうしてるんでしょうね、その人。

ハルさん

わかんない。

ちなみに、そのおっちゃんとの出会いは約10年前の本屋さんで、その人がいろいろな本を検索されていたところにお声かけしたのが最初だったというのは上でもご紹介した通り。

で、一連の話を聞いて、そのとき具体的にどんな本を探されていたのか興味本位で訊いてみると…。

ハルさん

鹿とか猪を捕獲するための罠の本を探してはりました。

なかがわ

それを河童に応用しようと思ってたんかな。

ハルさん

そうでしょうねきっとね。

なかがわ

いやお前、「初なりのきゅうり」で釣るんちゃううんかよ、みたいなツッコミもありますけどね。

ちなみに、見た目からして変な人とか、そんな感じではなかったんですか?

ハルさん

なんかあの、農業やってはるんかなみたいな感じでしたね。お話自体はいたって真面目というか、真剣に話されてました。

甥っ子にプレゼントする本でミステリ系がNGだった理由とは?

ファープレイン,アメ村,バー

TENGAショップに限らず、書店でもけっこう相談を受けることがあるというハルさん。

あるとき、「ちょっと遠くにいてる甥っ子に本を送りたいねんけど、なんかいいのないかな?」と尋ねられたことがあった。

ハルさん

それで、「こんなのどうですか」「こんなのどうですか」ってエンタメ系の小説をいくつかご紹介したんですよ。

そのなかに犯罪者が出てくる作品があって。

なかがわ

ミステリーとか推理小説系かな。

ハルさん

そうです。そしたら、それは無理かなって言われて。

甥っ子が刑務所に入ってるからって。

なかがわ

なるほど。

ハルさん

あとは、お婆ちゃんがね、息子夫婦は離婚しそうやねんけど、読ませたら離婚を思いとどまってくれるような本ないかな?とか。

なかがわ

難しいこと言いますね。

ハルさん

そうなんですよ。そのときはひとまず、自己啓発本みたいなのを薦めておきました。

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